日本の難民問題、出身国別の複雑な背景と課題
日本の難民認定率は1%未満とされ、欧米諸国の10-40%と比較すると著しく低い水準にある。それにもかかわらず、毎年多くの人々が日本に難民申請を行っているのはなぜだろうか。本記事では、最新の統計データと具体的な事例を基に、日本の難民問題の複雑な実態を出身国別に検証する。
日本の難民申請者の現状
2024年の難民申請者数は12,373人で、出身国は92か国にわたる。主な申請国は、スリランカ(19.8%)、タイ(17.2%)、トルコ(9.9%)、インド(7.7%)、パキスタン(5.7%)となっている。
一方、実際に難民認定された190人の出身国別内訳は大きく異なり、アフガニスタン102人、ミャンマー36人、イエメン18人、パレスチナ8人、中国5人となっている。この申請者数と認定者数の国籍構成の違いは、日本の難民制度の複雑さを物語っている。
出身国別の事情と背景
アフガニスタン:特別な関係性
アフガニスタンからの難民認定数が多いのは、地理的要因だけでは説明できない特殊事情がある。日本政府はこれまでに約1,400人のアフガニスタン人をJICAの奨学金制度で受け入れており、その多くが政府職員だった。2021年のタリバン復権後、これらの人々は「日本とのつながり」を理由に迫害対象となったため、日本が特別な保護責任を負う形となった。
通常、アフガニスタン難民の大部分は隣国のイラン(343万人)やパキスタン(185万人)に避難するが、日本に来る人々は、日本政府との直接的な関係を持つ人々が中心となっている。このため、日本政府は「特定活動」の在留資格を付与し、就労を認める措置を取っている。
トルコ系クルド人:外交的配慮と個別審査の問題
トルコからの難民申請者は申請数で3位を占めるが、2022年まで1人も難民認定されていなかった。申請者の多くは少数民族のクルド人で、「国を持たない最大の民族」として知られ、各地で迫害を受けてきた歴史がある。
興味深いのは、国際的な認定状況との乖離だ。UNHCRの統計によると、2019年にトルコ出身者の難民認定数は、カナダが2,012人、イギリスが761人、米国が1,400人となっている。これに対し、日本では長期間にわたって認定者がゼロだった。
この背景には、外交的配慮があると指摘されている。トルコ政府はクルド人に対する措置を「テロ対策」として正当化しており、NATO加盟国であるトルコとの関係を重視する日本が、その行為を「迫害」と認定することに消極的だというのだ。
法務省は2004年に職員をトルコに派遣し、クルド人の出身地を調査して「出稼ぎ」と結論付ける報告書を作成した。しかし、この調査では難民申請者の個人情報をトルコ政府に提供し、現地の治安当局と共に申請者の家族を訪問するなど、国際的な守秘義務に反する行為が行われたとして批判を受けている。
日本を選ぶ理由
では、なぜ認定率の低さが知られている日本に、多くの人が難民申請を行うのだろうか。
地理的・経済的要因が一つの理由だ。アジア地域から比較的近く、経済的に安定している先進国として、特に東南アジアや南アジアの出身者にとってはアクセスしやすい場合がある。
ビザ制度の影響も大きい。トルコ国籍者は90日以内の短期滞在について査証免除措置により、ビザなしで日本に入国できる。これにより、観光目的で入国後に難民申請を行うケースが多い。
既存のコミュニティの存在も重要な要因だ。埼玉県川口市や蕨市を中心に約2,000人のクルド人が居住しており、新たな来日者を呼び寄せる要因となっている。
情報の限界も無視できない。出身国で入手できる情報では、日本の難民認定制度の厳しさについて十分に把握していない場合もある。
日本の難民認定制度の問題点
解釈の厳格さ
日本の難民認定が厳格とされる理由は、基準そのものが国際的に異なるわけではなく、解釈と運用の厳格さにある。
迫害の定義において、米国、カナダ、欧州各国では迫害を生命と身体の自由に限らず、重大な人権侵害を含むとしているが、日本では迫害を命と身体の自由に限定する傾向が強い。
客観的証拠の過度な重視も問題視されている。迫害から逃れてきた人が証拠を持参することの困難さが十分考慮されていない。例えば、ミャンマーから逃れたロヒンギャが強制労働を受けたケースでも、「その期間も2、3日にとどまり、食事を取ることができない場合ばかりではない」として、生存は脅かされないと判断された事例がある。
一律的な判断の問題
特にトルコ系クルド人の事例では、個別審査ではなく一律に「出稼ぎ」として扱われている可能性が指摘されている。専門家は「日本でトルコ国籍クルド人が1人も難民認定されないことは、難民側に理由があるのではなく、法務省が手段を選ばず貫く方針なのだ」と指摘している。
ノン・ルフルマン原則と制度の課題
**ノン・ルフルマン(Non-refoulement)**は、迫害を受ける恐れがある人を、その危険がある国に送還してはならないという国際法上の基本原則だ。この原則は難民認定の有無に関係なく適用され、申請が却下された人でも、実際に迫害の危険があれば送還できない。
しかし、この原則の運用には深刻な弊害もある。事実上の永続的な滞在手段として悪用されるケースがあり、約7万人の不法滞在者のうち、強制送還を拒否する「送還忌避者」が約3,000人存在している。
2023年6月の改正入管法により、難民申請が3回目以降の人を強制送還できるようになったが、申請回数に関係なく迫害の危険があれば送還してはならないというノン・ルフルマン原則との関係で問題視されている。
解決策の模索
中間的保護制度の必要性
「難民認定か送還か」の二者択一ではなく、中間的な解決策が必要だ。日本では2023年12月から「補完的保護制度」が開始されたが、まだ限定的な運用にとどまっている。
各国では以下のような工夫が試みられている:
- 一時的保護制度:完全な難民認定でなくても、一定期間の保護を提供
- 定期的な情勢見直し:出身国の状況変化に応じた地位の再検討
- 段階的保護制度:情勢改善時の段階的な地位変更
私的支援難民制度の可能性
カナダの「私的支援難民制度」は興味深い取り組みだ。地域コミュニティ、宗教団体、企業などが難民の定住支援を担い、政府の負担を軽減しながら地域統合を促進する仕組みだ。
日本でも、アフガニスタン人に対する「特定活動」の在留資格では身元保証人が支援を行うことが条件となっており、類似の制度が部分的に存在する。企業による雇用とセットの支援プログラムや、地方自治体主導の受け入れなど、日本の実情に応じた制度設計が可能かもしれない。
審査制度の改善
以下のような改善策が提案されている:
- 迅速な審査制度:長期化による定着を防ぐ
- 出身国情報の充実:より正確な情勢判断のための情報収集
- 審査基準の明確化:人道的配慮の基準を明確にする
- 独立した審査機関:外交的配慮から独立した判断
おわりに
日本の難民問題は、単純な善悪論では解決できない複雑な構造を持っている。出身国ごとに異なる背景と事情があり、地理的合理性だけでは説明できない特殊事情も存在する。
重要なのは、人道的原則を守りながら制度の持続可能性も確保することだ。完全な解決策は存在しないが、各国の取り組みから学び、日本の実情に応じた制度改善を継続的に行うことが求められている。
国際的な責任を果たしつつ、制度の濫用を防ぐバランスの取れた制度設計こそが、真の意味での「人道的な難民政策」につながるのではないだろうか。
※Claude(AI)との対話を基に作成